最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2551号 判決 1950年3月24日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人鵜沢総明同戸田善一郎の上告趣意第一点について。
原判決は判示第一及び第二の事実についてそれぞれ痲藥取締法附則第七四条により旧法を適用したものであることは所論のとおりである。痲藥取締法は昭和二三年七月一〇日法律第一二三号をもって公布施行され同法第六五條により原判決の適用した昭和二〇年勅令第五四二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く痲藥取締規則(昭和二一年厚生省令第二五号)及び昭和二〇年勅令第五四二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く塩酸ヂアセチルモルヒネ及びその製剤の所有等の禁止及び没収に関する件(昭和二〇年厚生省令第四四号)は廃止されたのであって本件においては犯行時と裁判時との間に適用法令の改廃があり、しかもその刑に変更のある場合に該当するのである。從って別段の経過規定がなければ刑法第六條によって刑の軽重につき新旧比照をなすことを要するものである。しかし痲藥取締法附則第七四條には「第六十五條に掲げる法令廃止前にした行爲に対する罰則の適用については同條に掲げる法令はその廃止後もなおその効力を有する」と規定しているのである。そして右規定は法令廃止前の行爲に対する罰則の適用については刑の廃止変更があっても刑法第六條旧刑訴第三六三條第二号の適用を排除して常に行爲時法たる旧法の規定によるべきことを規定した趣旨であると解するのが相当である。然らば原審が右附則により行爲時法たる旧法を適用して刑法第六條の適用をしなかったのは正当で論旨は理由がない。
同第二点について。
論旨は原判決の刑の量定が甚しく不当であるというのであるから上告適法の理由とならない。
よって刑訴施行法第二條、旧刑訴第四四六條により主文のとおり判決する。
この判決は全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 塚崎直義 裁判官 小谷勝重)